「男の妄想と女の選択が交差する、現代の縁切り寺-ASYL-」(亀田恵子)

 京都の街は、昼間と夜とではずいぶん表情がちがう。地図に示された通りを進んでいるつもりでも、気づけば曲がるべき筋を間違えて、知らない名前の通りに入り込んでいたりする。朱色の大きな鳥居の前にゆれる小さな灯篭、大きな銀杏の木、薄闇から突如としてあらわれる見知らぬ通行人・・・まるで1つ1つの要素が異次元への入り口のように、人を惑わせるような気がする。ただ、こうした現実と非現実が交錯するような道のりは、これから扉を開こうとする作品と、どこか地続きのような不思議さを感じて楽しい。今回の『ASYL』は、京都公演・東京公演とも「寺」で上演されるという。寺もまた、昼と夜とではガラリと表情を変える場所だろう。その場に座を設けるというのは、「昼と夜」「現実と非現実」といった異なる次元の間(あわい)に現れる境界を刹那、垣間見せることのようにも思える。